junyoのほんだな

2020/11に移転しました。移転先はプロフィールに。

時間はどこから来て、なぜ流れるのか?(BLUE BACKS)

唯一面白かったのは、バッターがボールを打ち返す際の脳内反応に関する実験とインタビューの話題。(後述) そもそも間違って店頭購入した本。ブルーバックスから出た、ぶっ飛んでると噂の時間論の本を買うつもりだったのに、タイトル忘れて。。。 せっかく…

詞花芳名帖 (塚本邦雄句集)

扉書きには「物名歌と折句にこめて二二三名の詞友に餞る」とあるが、二二三の歌がどれもこれも超然の境にいざなってくれるほど言葉ひとつひとつが撰び抜かれている。おあそびの折句ではない。 ただ、同名登場が二箇所あって、まさかの同姓同名? 当該最初の…

図書(岩波書店定期購読誌)2020年10月号

圧巻は桐野夏生さんによる、新作『日没』をめぐる武田砂鉄さんとの対談。桐野さんは自分たちの努力もむなしく「十五年ぐらい前から、小説が人に及ぼす影響力が著しく低下したと感じています」と発言。読者というか社会が変質してきたことを嘆いている。その…

さがしもの(新潮文庫)(著)角田光代

令和2年5月発行の23刷に掛かっている帯は、今が旬の上白石萌音さんの顔写真入り推薦文。これで買う人も多いんだろうなと思いつつ、わたしは表紙絵のシンプルなのに見つめてしまう「何も書かれていない本」に吸い寄せられて買いました。(わざわざ言うこと…

今宵の月

ことしの中秋の名月は10月1日らしい。 日本人らしい「月」の表現を探したくなるたびに取り出す雑誌。2008年に出た『日本の歳時記』シリーズの一冊。今や歳時記はWEBにも溢れているのに、紙のほうが落ち着くのは歳のせいでしかないのかも。。。 いやいや、…

自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く (角川ソフィア文庫)

テーマそのものには興味ないが、といっては著者に失礼かもしれんのに、言っちゃおう、そのまま。 ことの舞台が津軽だったから起こった事案なのだ。東京なら無かった。方言の威力だ。てことは、様々な分野において、標準語ベースでなく、強烈な(というのは言…

史記列伝(岩波文庫)

列伝はもともと大好きなジャンルなのだが、岩波文庫のシリーズは表紙のデザインに惹かれる。しびれるほどに。装幀をされている杉松欅さんというお方のことが気になって仕方ない。 樹木尽くしは本名? 時間を見つけてもっと探索しようと思う。

藤沢周平 遺された手帳(文春文庫)

朝の連ドラにしてほしい(とも思うし、しないほうが遺思に添うのかとも考える)くらい赤裸々な、有名作家の半生内面史。 時代小説の名手藤沢周平さんは生来寡黙だったようだが、日々の心の声、叫びを胸の内にしまって生きておられた最大の要因は年若く逝った…

流れとよどみー哲学断章ー

昨日の今日で、さっそく大森先生の本を探しに、近所の古本屋へ行けば、あった! 何十年ぶりで再会しても大森荘蔵先生のことばは一々深度が違うのです。 哲学的問題を日常レベルの場に引きずり落して論じて魅せる、これぞほんものの哲学者なのだと感服。字数…

科学者が人間であること (岩波新書)

「想定外」という言葉はイヤな感じ、と率直に訴えるベテラン科学女史の悔悟と提言そして警告の書。 自然とはそもそも想定が成立しない世界なのだから、おのが失敗を想定外ということは許されないと断じる。 東日本大震災の2年後に、科学者みずからが自身を…

悪党・ヤクザ・ナショナリスト 近代日本の暴力政治 (著)エイコ・マルコ・シナワ(邦訳)藤田美菜子

これまで表立って触れられることの少なかった「暴力専門家」(元・武士や博徒、山賊、犯罪者など)に照準をあわせた政治史は新鮮。明治維新以降に行き場を無くした侍らが戦闘の場を求めていたことくらいは知られているが、これまでの政治史はいわゆるお偉い…

伊予の俳諧(愛媛郷土叢書11巻)

もともと「愛媛の俳諧史」執筆を頼まれたのに、明治以降の新派は書けないと著者の意向でタイトル変更となった本。昭和37年発行。 著者・星加宗一さんはそのころ県立八幡浜高校校長で江戸時代の俳諧研究をされていた由。なかなか頑固なお方のようだ。子規らに…

絶対貧困 世界リアル貧困学講義(新潮文庫)

2009年に発表された、アジア・中東・アフリカのリアルな貧困社会のすがた。実際にスラム街や、女性がしきる売春宿などに止宿し、行動を共にしながら体感しているから、過酷苦渋な面だけではなくて人間の喜怒哀楽が見えている。読んでいて、壮絶な描写と並ん…

ことばを失った若者たち (講談社現代新書)  1985/9/1

いまや、ことばを失った日本社会、ということになるのだね。 1980年代の若者のことば・コミュニケーションを題材に、社会の変容を眺めながら、これは近代以降の日本人論なのだ(とまでは著者は断じてないが)。明治維新の時も、昭和の高度成長期も、甘えあっ…

言語小説集(新潮文庫)

井上ひさしワールドは外れなく面白い。(けど、抱腹絶倒はしませんでした。)お気に入り作品は、さすが演劇世界のひとだなあと感歎する方言満載の『五十年ぶり』。一般に小説家の書く方言は特定の地域(郷土とか)のそれで読ませるが、井上さんのは全国津々…

ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

帯に載っているメッセージを半信半疑で確かめるように読んでみたが、ん~全く共鳴しない。救いと光に満ちた長編小説ということらしいのに残念。 巻末解説で中瀬ゆかりさんが明かしているのは、自身のパートナー喪失直後に、この著者白石一文さんから送付され…

沖縄グラフ 1972年5月号(復帰記念特集第1号)

新内閣の話題であまり沖縄担当大臣のことが取り沙汰されていない気がして沖縄の戦後史関聯本を散策していて出会った雑誌。1958年4月創刊号から今に至るまでバックナンバーを購入できるって凄いよ。 毎号、ほぼほぼ表紙は女性の写真で飾られていて清々しく、…

新装増補版 自動車絶望工場 (講談社文庫)  鎌田慧(著)

今朝の愛媛新聞文化欄(!?)掲載の「1強の決算」ほど忖度なしの痛快総括はないでしょう。執筆者の鎌田慧さんといえば、この本。かれこれ40年近く前になるが、当時のトヨタ自動車の期間工として地獄を体験した記録で、今読んでも壮絶過酷な労働ぶりが生々し…

茶話(岩波文庫 緑31-2)薄田泣菫・著

ダルビッシュ有似だという声に賛同。でも本書に纏められたコラムっぽいお話『茶話』が書かれたのは30代後半だから、もう少し老けているはず。実際に文章を読むともっと年嵩の印象だが、大正初期のヤングアダルトはこうだったのかもしれない。当時の欧米政治…

古句を観る 柴田宵曲著(岩波文庫 緑106-1)&(七丈書院本)

古句と聞いて、「コクがある」のコクと響くような印象(勘違い?)で手に取った一冊。 岩波文庫収録のおかげで振り仮名が付き、新字新かなとなって読みやすいのは有難いが、昭和18年の七丈書院本の表紙に配われた絵や筆文字の趣が失せるのは残念だ。左の写真…

紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす 武田砂鉄

2015年に出した初の著書で既存のメディアを叩きまくったのに、逆に絶賛され何たら賞を貰ってしまった御仁はその後、定位置を与えられて鎮座しているように見える。 基本的に忖度をしない態度が好感を持たれたのだろう。わたしも、その点は大いに顕彰に値する…

『批評の測鉛』(新保祐司・著)と「ショパン200年の肖像」展

(クラッシックづいているこの頃。そは何かの巡り合わせなのであろ。) 新保さんの批評家魂は嫌いでないが、時として嗜好が排他的に作用しているのは残念。評者として、文字にあらざる対象の音楽・絵画を批評する醍醐味を熱く語っているなかで、ショパンの肖…

【続】kotoba ベートーヴェン 2020 Autumn Issue No.41 #会話帳改竄事件 #プレイリスト

ベートーヴェンの肖像画としては、懇意だったヴィリボード・ヨーゼフ・メーラーの絵が本人に最も似ているらしい。それはそれ、素人が抱く人物像はさておき、著名な現代音楽家たちが彼をどう観ているのか、それぞれ個性的な視点があって実に面白い。坂本龍一…

kotoba ベートーヴェン 2020 Autumn Issue No.41

本日入手。冊子をはらはらっと捲って紙間から湧き出る芳香はイイ紙の匂い。表紙絵はアップで見るとベートーヴェンのイメージが変わる。一番ポピュラーな凜凜しい面構えの絵に慣れすぎているのだ。最下段に載せておいたイラストに至っては、何だか小澤征爾さ…

緒方洪庵の薬箱研究(著:高橋京子/大阪大学出版会)

今日の愛媛新聞で知った「半漢半蘭」の薬箱。大阪大学には洪庵先生の薬箱が二つも所蔵されていて、その研究成果とか。292頁は大著といえないがカラー写真多数と聞いたら、ぜひ閲覧したい。 ・・・が頒価27,500円。

『藁の王』(著:谷崎由依)&『金枝篇』(著:James G. Frazer/訳:吉川信)

新感覚の迷宮小説の海にただよう気分がしばらく抜けない。不快でもないが快適でもなく、ただ浮かびたゆたう、文学という名の言海というものか。 物書きが行き詰まり苦悩し揺れる心の世界を見事に小説という手法そのもので描いている。ちまたに氾濫するハッピ…

忍びの国(新潮文庫)

表紙絵は安田顕さん? ひとたびそう思ったら。。。安田さんはそう聞いて喜ぶのか、悲しむのか、そんなしやうもないことばかり考えてしまう。 それよりもここに書くべきは、この小説の痛快無比のおもしろさだ。尤もその謂いは解説を書いた児玉清さんの受け売…

少女革命ウテナ(1) (フラワーコミックス)

なにゆえに少女漫画を読むことになったのかといえば、松田青子というふざけた筆名作家を知ったのが始まり。どんな小説を書いているのか、まず手にした作品が『持続可能な魂の利用』。その本文に入る前に扉に掲げられた文言3行がこれ。 あの人は消えてなんか…

木下利玄全歌集(岩波文庫)

この明治生まれの歌人が遺した歌集は四冊しかない。編者によれば「宿命的とさへ見えるほどに、一首一首が執拗な推敲過程を背負ってゐる」のだ。一見凡庸に見えるのに、繰り返し読んでいるとその味わいが深まることに驚きを禁じ得ない。 わたしの一番惹かれた…

図書(岩波書店定期購読誌)2020年9月号

例月は何気なく見過ごしていることが多いのだが、各篇ごとにタイトルの下にあるイラストの中で「?」となって凝視せずにいられないものに遭遇。作者は高橋好文さんとなっている。 昔なつかしの電話ダイヤル(?)の前に洋梨などの果物。文章は現在と過去100…