junyoのほんだな

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幻の東京オリンピック(講談社学術文庫)

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数年前「いだてん」が国民(わたしを除く)の注目を集めていた頃から、幻の東京オリンピックが話題にのぼることが屡々あった。その後はそんなことが無かったかのように2020年東京開催準備へと盛り上がりを見せたが、コロナ禍によって、再び1940年の幻大会の記憶記録が想起される事態に。

1940年の前々回1932年ロサンゼルス大会の直前に、日本は満州国を建国し、また五・一五事件を暴発させるなどして世界の反感を買って国際連盟を脱退。それでも堂々と大会に大選手団を派遣し、外交的に力を誇示した。そんな中での1940年大会招致活動だったのだが、1936年ベルリン大会がかのアドルフ・ヒトラー総統の指揮下に開かれたことを併せて考えれば、オリンピックがいかに政治色強く、国際社会の力関係に揺れてきたかが鮮明になる。

それにしても、開催国による中止・返上で延期なしだったのはこの一回だけというから、日本はまたもや中止・返上の歴史を上塗りすることになるのかもしれない。もしそうなら、アスリート諸君や関係者には気の毒というよりないが、コロナ禍対応の失政が最大要因となる可能性に関心が向いてしまうわたしがいる。


なお、この本は元NHK記者としてスポーツ担当だった橋本一夫さんが1944年出したNHKブックス『幻の東京オリンピック』の簡易版にあたるのだろう。