junyoのほんだな

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わさびの日本史 (著)山根京子

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 わさび愛がすばらしい。植物学の先生がDNA研究としてルーツを辿って中国へ渡るのはわかるが、学問の枠をはみ出して古文書のなかを探索してさまようのは、先駆者のいない領域というのも大きかろう。栽培植物起源学。初めて聞いたジャンル。

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若冲の野菜の涅槃図(正式名称は違う、というのは以前にも書いたが、わたしはそう呼ぶ)のどこに山葵(わさび)が? 左下隅の楕円マークの処といわれても、即座にはわからないレベルだが、確と見いだしてるのは、さすが。

 

余録としてのコラムも面白い。文化文政期にあったカステラにわさびという賞味法は意外とイケるらしい。   最後に著者の愛に応えて、これだけはコピペしておこう。​

栽培品種は、失われたら復元困難 ・・・系統維持が非常に難しく、・・・山に行けば野生が自生しているから大丈夫、という考えは間違いである。・・・長い時間をかけてできた品種は、一度失われてしまったら、容易には復元できないのだ。(p217)

 

 一次産業の維持が危ういこの国で、栽培植物起源学は、これから注目度が高まるかもしれない。