2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧
とんでもない本に手を出してしまった。平家物語の魅力を、外国の(世界的)戦争文学と対比させながら浮かび上がらせようとする意欲作。戦争文学を専門に研究してきた著者の、ひとつの金字塔的な論考になっているんじゃないの。 平家物語って分類的にはどうい…
第58回群像新人文学賞受賞作。きのう読んだ乗代雄介のデビュー作。昨日は、小説は好きじゃないなんて言っておきながらこれを読んだのは、受賞作品に対する選考委員たちの評に新奇さを憶えたのと、あとはやっぱり表紙絵なのだ。なんとも不思議な絵。作者は To…
大胆にも本物の読書家を小説で表現してしまう、著者こそ「わたしは読書家」って宣言の書だろ。ちょっとうざい感をもってしまった自分のほうがいやになった。 それにしても一般には、読書家とは小説読書人なんだろうね。わたしは基本、小説はあまり好きじゃな…
この短編連作小説は読んでいて、はじめからず~っと違和感がある。はじめは三文小説だからかな、とか思うんだけれど、その答は読み終えてやっとわかる。違和感をいだかせるのも連作の仕掛けのひとつだったのか、と。さいごまで読み終えて、ずっとあった違和…
今の言語学ってすごく愉しい。言語ってコミュニケーションの道具じゃなかったんだね。 思考のためにこそ言語があるってことが実感できただけでも読んだ価値がある。う~ん、やたらと難解でわけのわからない文庫本が存在するのもいいと思うよ。
その昔、TVで百恵ちゃん主演の赤いシリーズてのがあったなあ、なんて思いながら本書を手に取った。そして、日本の医療基礎研究の実態を見る事になった。 2012年ころから本格的に騒がれた、高血圧治療薬をめぐる不正事件・・・をわたしは思い出せないでいる…
天才的なスリの指の動きと冷めたこころと、彼に絡まってくる裏社会の人間どもの戯言がリアリティを以て迫る小説。何のためにスリをするのか。それは、何のために生きてるのかと同義なのかもしれない。 で、わたしの一番のお気に入りは、表紙のヤンキー座り・…
がんとは何か? それに対するひとつの専門的見解が示されているのも興味深い。 凄い作家の登場かも。 著者の岩木一麻さんは、1976年生まれ 40歳 神戸大学大学院修了。 国立がん研究センター、放射線医学研究所を経て、現在は医療系出版社勤務 「このミステリ…
建造物設計として、いのちを守るとか機能性などの役割はわかりやすいが、歴史を伝えるとか平和を創造する目的性とデテールの関係なんて、わたしはこれまで考えたことはなかった。昭和20年代の広島平和記念公園の計画コンペをめぐる抵抗や対立の流れは、日本…
かのロミオとジュリエットの悲恋を、視点をかえて全く別の物語に読み替えてしまう空想の発端は、人は嘘をつく生き物という一点。それだけで終わったら、ふーんって感じだけど、その着想をもとに目の前の殺人事件の真相を解き明かしちゃう組み立ては最初新鮮…
博覧強記そのものの編集人・松岡正剛が仕事を通して感じてきた本音をありのままに綴ろうと苦心惨憺している本。率直であろうとするあまり、却ってカタカナ語が多用され、「 」で括った語句が溢れ、ややうんざりする。西洋・東洋の古典・宗教書・哲学書から現…
文学翻訳者らしいタイトルと、表紙絵そのまんまみたいな人柄のにじむ軽快エッセーだ。 あるとき、エレベーターの案内アナウンス「五階でございます」がこう聞こえたそうだが(ネタではなさそうな文章だよ)、それをわざわざ人に語ったところが、お仕事病みた…
「金曜日の本」と題してるが本の紹介本じゃない。著者はいう。 「本を読むことももちろん大事だけれど、その前に、自分ひとりで選ぶことが重要だった」 かれはクラフト・エヴィング商會の名義でユニークな本作りをしている小説家で、少年期を思い出してのエ…
昨年(2017)出たばかりの超短編小説集。起承転結を四コマ漫画感覚でよめる。いしわたり淳治って人の作品はお初だが、平成を生きるマイペースな若者群像をひややかに、かろやかなグロさを込めて描いている。 時間つぶしにもってこいの一冊。読後にほとんど何に…
巻末にある「首山堡と落合」と題した付録文書が興味深い。ロシア侵攻の際の首山堡攻撃を作戦としたのは誰か。司馬さんはこの物語を史実に忠実にしなければならなかったらしくて、誤りに気づいた点を公開している。後の改訂にも言及。 すごい人だなあと思う一…
図書館についてあれこれ言いたい。作家とか文学者といわれる人間はそういう生きもののようだ。 タイトルにもなっている「図書館情調」を書いた萩原朔太郎は独逸式図書館と米国式図書館の情調を愉しげに述べつつ、自分ぴったりの図書館を欲してやまない、愛す…
あらためて七版とくらべると、編集面でのちがい多々なり~。 昨日の「台湾省」記述の問題を四版で見ると、当時は地図の記載もないから、問題に抵触していなかった。何版から地図を載せたかは知らないが、わかりやすくするための手立てがかえって、わかりにく…
先月(平成29年12月)に報道されていた、台湾の台北駐日経済文化代表処(在日大使館に相当)が「広辞苑」に対しての修正要求の箇所を確認してみた。 「中華人民共和国」の項目で、地図か載っていて、台湾が「台湾省」と記載され、中華人民共和国の一部である…
漢字小辞典をはじめとして実用性では、この付録が勝れているのは重重承知の上で、たのしさにおいては昨日紹介の付録冊子、三浦しをん著「広辞苑をつくるひと」がいいんだなあ、やっぱり。 そういう意味では辞書づくりに携わっている人々が真っ先に称賛の対象…
広辞苑第七版を買ったら、付いてきた。うれしい非売品。 発行予告の文章がこちら。 ↓↓ 三浦しをんさん(小説『舟を編む』で2012年本屋大賞を受賞)の、『広辞苑 第七版』製作の現場を訪ね歩いたルポエッセイを、ご予約くださった方限定でプレゼントします。…
元・図書館司書の著者ならではの図書館ネタともいえる本のえらびかたがイイ。 書評集とおもって読んだら失敗しているが、エッセーと思えばなかなか専門性ゆたかで個性的。 児童文学者E.L.カニグズバーグの出会った日本語エピソードがおかしすぎる。 「日本…
哲学者が、現代人の常識といえそうな「格差は悪」の思考に真っ向から異を唱える。問題の本質を正しく認知するために哲学は有効といえる見本的著作。 平等性と充足性や満足度を混ぜこぜに論じてはいけないのだ。 ところで、 本の中扉のうらにある一文は何のた…
"ある意味で特異な哲学者"による多様な論集だ。特異というのは、現代(執筆当時1974年)において哲学者の多くが論じやすく答を導きやすい問題にばかり取り組む現実がある一般論に対しての賛辞だ。 コウモリであるとは・・・の問題への取り組みは哲学者よりも…
『ゼロからトースターを作ってみた』で一躍有名になった青年トーマス・トウェイツのプロジェクト第二弾。はじめ象になろうとしたのだが、象はあまりに人間的な動物と聞かされ、友のすすめるままにヤギに変更。かれのプロジェクトがとんでもない企てかと思い…
「働き方改革」が聞いてあきれる。 ほぼリアルな安倍内閣叩きでもある。笑い話をよそおっているからゆるされるのか、ギリギリ肝心な固有名詞をはばかっている手腕が冴えているのか。この本が国会審議の場で取り上げられ、検証されたらいいのだが。
坂口安吾の若いころの短編小説集。表題作のアンゴウは、安吾と掛けているのか? などど臆測しつつ読み進めることになるのだが、・・・終戦直後に巡り会った古書をとりまく戦死の友、彼の失明した妻。はたしてアンゴウの意味するものは。時代背景を巧に描きこ…
まあ統計なんてものは、ほどほどに参照して楽しくながめるのが一番。 愛媛県は「街にある大きな広告看板を見てしまう」ランキングで全国最下位だって。 なんだそりゃ。 うちの町には大きな広告看板なんて、あったか。 内容(「BOOK」データベースより) 医療…
まんがです。 WEBで50ページ分も試し読みでけるとは、すごいさーびす。 https://sokuyomi.jp/product/mamahatenp_001/CO/1/
格別大したことのない文章力と思いつつも気が付けば、とっぷりと作中にいる。そんな魔術的な筆致で物語がすすんでいく。案外、現代において、われらのような都会型人間にとって無縁と思われた狩猟の血なまぐささを中心に据えた展開なんてものがニンゲンの本…
若い、鋭い、英国の論客が21世紀に登場。この本の弱者とは、一般的に言う社会的弱者ではなく、労働者階級全般を指す。かつて中流と思われていた大多数が実は、権力者等によって不当に搾取されてきた弱者であることを宣言した、怒りの書なのだ。無論、イギリ…