junyoのほんだな

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2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

お金のいらない国

寓話としての出来映えはサッパリだ。未来への提言として理解できるが、面白くはない。唯一いいぞ、と感じたのは裏表紙にかかった帯の文字。「この本にも値段がついているのが、ちょっとだけ不本意です(苦笑)。……著者」。この一文を価格表示のそばに印字し…

鎖国 日本の悲劇(昭和26年縮刷版)

畏れ多い言い方になるが、この本は戦後まもない迷著にもかかわらず名著として受容された貴重な歴史書だと思う。 右から左へ読ませる扁額風縦書き表記を見ただけで時代を感じさせる。前年刊行本の縮刷版として1月20日発行で2月10日再版とある本書はどんな読者…

戦後史の解放II 自主独立とは何か 前編: 敗戦から日本国憲法制定まで (新潮選書)

現行憲法はGHQに押しつけられた憲法にすぎないのか。GHQと日本国政府の外交的駆け引きのドラマが描かれている。昨今の憲法改正論議では憲法九条ばかりが取り沙汰されるが、何を守る議論なのか。かつて天皇制存続に命をかけ翻弄された昭和20年当時の…

図説 東京裁判(太平洋戦争研究会 編)

東京裁判に限定した記録と取材がつまっている。わたしが新奇に接したのは、戦犯の夫人らの言動がわずかながらも紹介されている点だ。司令官杉山元の自決を追った夫人の自死のようす。隠匿された遺骨をめぐる東条英機夫人の発言。 くわえて注文をつけるなら、…

森鴎外―日本はまだ普請中だ (ミネルヴァ日本評伝選)

「日本はまだ普請中だ」のタイトルが写真の鴎外の口からこぼれているように思えた。遠い存在となってしまっている鴎外を平成の時代に呼び寄せたら、そんな趣向を著者は企んだんだろうか。 600ページを超え、4,000円を超える書物。著者は鴎外文学読者の知識量…

「混血」と「日本人」 ―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史

わたし自身、混血ということば・文字を注視したのは初めてかも知れない。「日本人の血」概念そのものが曖昧模糊としているのに、自称100%日本人の血が流れていると根拠無く信じて疑うことすらない日本人がここにもいる。大半の日本人(とりあえず、外見上、…

死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者

身がふるえるほどの奇縁で手にした一冊。昨日紹介の『澁江抽斎』を図書館の書庫から出してもらっている間、書棚を見て回っていて著者名「小堀鴎一郎」の「鴎」字に反応した。めずらしい字が入ってるなあと思ったら、彼は鴎外の孫だった。抽斎がとりもつ縁な…

澀江抽斎(鴎外選集第六巻所収)

昨日の須賀敦子の思い出の本の一冊がこれ。彼女の父は森鴎外の著作として何を読んだかと問い、『澀江抽斎』を読まずにどうすると指南したのだ。澀江抽斎? わたしも須賀さんと同じで、森鴎外の文学作品を読んできたけれど抽斎なんて人の史伝はしらなかった。…

遠い朝の本たち

この本のおかげでわたしはとんでもない探求の泥沼にはまってしまうことになる。(委細はいずれ披露しよう。乞うご期待。) 表紙は幼いころの彼女と父に違いない。父の大きさが表現されてるんだろうなあ。 さて本書は、学識ゆたかな須賀敦子女史が記憶にのこ…

14歳、明日の時間割

現役中学生作家の等身大小説に驚愕。生き生きとした描写・筆致は中学生ではないというか、中学生をなめてはいかん、というか、拙い文章を垂れ流しているじぶんがいやになる? いやいや、すてきな作家に出会えたことを祝いたい。どこまで成長するのか楽しみだ…

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

ここで死んだら、もう○○しなくてもいいんだ・・・なんて思ったことは、何度かある。 それくらい追い詰められて、自力(あるいは何かのおかげ)で踏みとどまれる間は大丈夫だけど、ボーダーはどこに潜んでいるか知れない。似たような気持ちになった人はぜひ本…

検事の本懐

表紙絵の女神はフランクフルトのユースティティア像だろうか。象徴される天秤の両秤に載っているものは、法という名の正義と人間それぞれのいきざまということか。目隠しでなく、白眼(?)の盲目っぽい像が選ばれたことにも暗示を感じる。などと、本文より…

動物哀歌―村上昭夫詩集 (1968年)

この版で読みたいなあ『動物哀歌』を。没して50年の、哀しい詩の人。 登場する動物たちの鳴き声はかれもかのじょも泣いているみたいに、耳に残る。。。そんな印象だけがこだまする。

デモクラシーとは何か(ON DEMOCRACY)

政治学の泰斗R.A.Dahl博士が夫人の熱心な支援で書き上げた、初心者向けの入門書決定版。 政治家は読んだ方がいいよ。分かっているつもりでも、国民に政治問題をわからせられないってことは、本当は自分が分かってないからなんだ。経済を語るにはデモクラシー…

乞食王子(昭和31年刊行版)

この昭和31年版が最初の『乞食王子』だと思う。カバーイラストもいいし、本紙のイラストも好きだ。そんなことより好きなのは、やはり自称乞食王子の著者の文章だ。戦後の文筆家として、あるときはGHQにも出入りし、あるときは大阪昇平や横光利一と交流し…

その後の福島

2018年10月刊。原発事故のあとを丹念にルポしてきた著者の、一人のおとなとしての悔しさがにじむ。彼女のやさしいまなざしに応えて、多くの被災者が取材に協力してくれたことが手に取るようにわかる。何もしていないわたしはせめてこの本を一人でも多くの人…

いっしょにお茶を(辰巳泰子歌集)

装釘も辰巳女史だったんだあ。表紙いらすとは人のかおにもみえる。(母性ゆたかな歌も多いけれど)どれもこれも屈折してるようで嫌みのない滋味がしみだしている大阪のひと。 しずかに雨降る日にはこんな歌がわたしにはひびく。 ↓↓ 叱られてあの絵の中に入り…

ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~特別版

古書店が舞台のヒット小説が映画になってまもなく公開。前売り特典の小冊子がほしいだけで前売り券を買ってしまった。非売品てことばに弱いんだなあ。10ページにも満たないんだけど、うれしいんだなあ。絵本『ぐりとぐら』にかかわる小品で、当然次回作のプ…

戦時の音楽

あくまでも17の短編"小説"集なんだけど、それぞれに異なるせつなさが漂っている。戦時下のくらしと音楽がらみで。たのしいばかりが音楽じゃないんだね。 読後、著者が1978年生まれと知って、どこからわいた哀感なのだろうと不思議な気分に。そんな印象をもつ…

つきのぼうや(絵本)

1962年うまれの、ほそなが~い絵本。このかたちが先に生まれたのか、ものがたりが先に生まれたのか。どっちでもいいけど、こんなにマッチしてるのはそうないね。この本が翻訳出版されてないくにの子らがかわいそう。いろんないみで。

泳ぐのに、安全でも適切でもありません

(It's not safe or suitable for swim.)泳ぐのに、安全でも適切でもありません ほんとにそんな看板がアメリカのどこかにあったのだろうか。ふと思って、すぐに、まあいいや、と読み過ごしてみたり、日本の海や川のほとりにそんな立て札はないだろうな、と思…

忙しすぎる人のための宇宙講座

地球人はみな火星人の子孫という可能性がある。そんな大真面目な科学的知見にふれるだけでも読む価値がある。 原題でも for People in a Hurry とあるから世界中の忙しすぎる人に読んで欲しいと思って書かれたことは確かだ。米国の超有名、天体物理学者はあ…

なぜ古典を勉強するのか

学術書みたいなのに素人受け狙いの( )付き独白多様な古典学入門書。 たとえば、歴史学者(多くは老研究者)とか、・・・ジョン・メイナード・ケインズのごとき立派な紳士(顔貌はたしかに立派だが、振舞いは男女九人の愛人をもつなどそれほど立派ではない…

はじめての新書

岩波書店の新書創刊80年記念に出た、『図書』臨時増刊つまりおまけ冊子。おまけとて侮っちゃいけない。巻末に他社の新書編集長11人にそれぞれ5冊のおすすめ新書を取材して掲載してる。みんな当然自社の新書(と岩波のも1冊)を紹介するけれど、ライバル社の…