junyoのほんだな

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2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

SSS(連作長編詩)

(わたし的に、古本屋でみいつけた掘り出し物。) SSS―表向きには推理小説同好会、その実はかつて自死した学生のためにつくられた “SOCIETY FOR THE STUDY OF SUICIDE"。タイトルだけじゃあ何の本かわからないけど、自殺研究会のメンバー6人が綴った独白・…

船に乗れ!〈1〉Auf die Schiffe,ihr Philosophen! 合奏と協奏

青春音楽小説として清々しい。著者の高校時代の体験がベースらしく、作中のチェロを実際所有しておられる。(盗難さわぎで話題を盛り上げたりもしたことあり。演出でないと思いたい。) 読む前から気になり、読み終わってもすっきりしないのはタイトル"船に…

イデアの影-The shadow of Ideas (中公文庫)

禁断の不倫小説? 殺人事件推理小説? いえいえどちらでもない、新鮮な感覚をたのしめる、森博嗣さん(としては異色)の本。各章の頭に、何の説明もなく谷崎潤一郎の『細雪』の一部分が掲げられているのは谷崎没後50年(2015年)記念出版だから、と説明が…

総理にされた男(宝島社文庫)

久方ぶりに痛快無比な小説に出遭った。総理大臣の代役に仕立て上げられた、さえない男優が驚異的な活躍をするエンターテインメントに仕上がっている。驚嘆すべきは現今の日本を取り巻く政治課題をみごとに解説しつつ、思いっきり揶揄しきってみせた緻密な構…

体の知性を取り戻す(講談社現代新書2280)

昨日読んだ『身体知性』に再々採り上げられている本の一冊がこれ。武術にはまったライターさんの小児体験におどろいた。正確には、ほんとに小学一年生かっていう感性と、それをありありと覚えている記憶力にびっくらこいたあ。 小学生に入学してすぐ、「小さ…

身体知性 医師が見つけた身体と感情の深いつながり (朝日選書)

装画(赤池佳江子)装幀(田中久子)がしゃれていていい。重厚なテーマをかろやかにしてくれて、手に取りやすい。ありがとう。でなければ、医師・合気道家の著者の臨床現場での苦労談にすすんで接しようという気になれなかったかもしれない。 内容としては、…

長い長い郵便屋さんのお話(2018年新訳/栗栖茜訳・海山社)

古典の域にある傑作童話が著者の本国ベルギー語の原本から忠実に訳されて出た。長年親しまれてきたのは、英訳本からの迂回訳プラスアレンジで、それなりに名訳なのは間違いないが、原作者の思いに沿いきれてない面も(そのことは旧訳者・中野好夫さんも公開…

魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう行動するか

チンパンジー顔負けの知性? 簡単には信じられないが、9歳の魚(ふぐ)と見つめ合っている写真なんぞ見せられたら(巧い演出かもとおもいつつも)すてきな意識改革をもたらすと思えてくる。しかし、魚たちのそういう一面を知ってしまったら。いままでみた…

水中翼船炎上中 (穂村弘歌集)

金ならもってるんだ金なら真夜中に裸で入るセブンイレブン 苦しいよ死にたいという書き込みに生きてとコメントする天使あり 一年生になったら一年生になったらと歌う子供の顔が老人 歌人としてお若い人なのかと思いきや、昭和30年代生まれ。(何をもって若…

嗅覚はどう進化してきたか―生き物たちの匂い世界(岩波科学ライブラリー278)

(わたしが知らなかっただけ?)マスクメロンのマスクってmask(仮面)じゃなかった。musk(麝香)と似てるわけでもないのに、その名を冠してたのね。そのほかにも、においに関する知見は初耳だらけで面白い。

記憶における沼とその他の在処 岡田一実句集

わたし的に大注目の俳人。B6版の表紙をおおかた覆う帯にしるされた、金原瑞人さんの推薦文にすっかり惹き込まれた。ヤ・ラ・レ・タって感じ。以下全文紹介。 17という絶望的なほど短い音数で 構成された俳句は、 それ自体が世界なのではなく、 世界を想起さ…