junyoのほんだな

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2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

千年、働いてきました: 老舗企業大国ニッポン (新潮文庫)

にっぽんの老舗企業よ、あっぱれと日本贔屓だけかと思ったら、本質は支柱にある老舗経営者らのいわば日本的「志」へのエールであり、アジア諸国に対するひそやかな期待を(いささかの絶望も含みつつ)込めての執筆だった。日本的老舗、それはとりもなおさず…

オールドレンズの神のもとで

堀江敏幸さんの短編小説集。実にいろんな顔を持っている方と感じ入る。誰にでもあるような日常の一コマに、人それぞれの過去を絡ませて味のある作風かと思えば、後頭部に四角い穴が空いている一族などというSFチックでなおかつ主義主張の臭いがする佳作ま…

絵本 御伽草子 象の草子

凡庸な装本に飽きたおとなのための草子本。ページをめくるたびに背景色も文字色も変わるんだけど、全面朱色に白抜きの文字が1行50字くらいでズラーッと縦にならぶパーターンが何度もあって疲れる。わたしって案外、平凡なつくりのほうが落ち着く。

井上陽水英訳詞集

井上陽水デビュー50周年に、彼を愛する(というか、たぶん彼の歌を愛する)ロバート キャンベルさんが陽水の歌を英訳。歌詞として成立してるんだろうから、これを陽水が唄ったアルバムなんてのが出る・・・? (買うよ。)

『スタア誕生』

「あたし」という、おしゃべりな女子青年の語りが映画をめぐって次から次へとえんえんえんえんとどこまでもつらなっていく。決してだらだらしてなくて、描写や説明が豊富なのにオタク調(そんなことばが生まれる前のノスタルジックな時代かな)でなくて、軽…

穴あきエフの初恋祭り

数日連続の多和田葉子祭り。ちょいとはまった理由(を分析してみた)その1。小説の小道具が突飛なのにストーリーに馴染んでてすごいのだ。お金がないときに、リクルートスーツを揃えるために代用としてハロウィーン仮装衣装ですませるとか。その2.比喩も…

言葉と歩く日記(岩波新書)

日本語とドイツ語で小説を書き、真摯に言葉に向き合ってくらす、同世代人・多和田葉子さんの日記。まったく異なる言語を駆使している物書きの方だけあって、感性が研ぎ澄まされているのは格別なんだけれど、庶民感覚(に近いところ)で驚いたり感嘆したり疑…

献灯使

多和田葉子さんの(日本語による)小説。日本語ならではの、近未来小説の世界に(暗いのにうっとり)漂ってしまった。荒廃し鎖国している未来の日本で、死なない老人と、虚弱すぎるが知的で心優しい曾孫の物語。映像化できるかもしれないけどきっとそれは別…

B級キャスター

この本読んで、異業種参入の村尾信尚さんがちょっと好きになった。一途に生きていれば、周りが放っておかない見本のような生き方をしているヒト。無論、この人は恵まれている特例の一人ではあるが、未来の見えない若者にも、つかれきった中高年にも読んでほ…

日本人はなぜ「頼む」のか ──結びあいの日本史 (ちくま新書)

日本で、頼み頼まれする人間関係のありようは古代から変容しながらも続いてきた、日本的文化なのだ。「頼まれたら断れない」心理の深層を解き明かしていく。ただ、「たのむ」を「憑む」と書かなくなったことは、神仏との関係が希薄になったことと大きく関わ…

桜ほうさら

桜ほうさらって何だろ。そう思って手に取る。おお、江戸時代が舞台の、心にじんわりと染みる宮部みゆきワールド。桜ほうさらの意味なんて、最後までわからなくっても、大和ことばの雰囲気だけで十分。江戸の情緒がよう似合う。読み終えてみれば、さすがみご…

フレデリック(絵本:ビッグブック)

谷川俊太郎の訳本ということに惹かれて読む。絵も言葉もいいんだけど、価格9,800円プラス税にはおどろき。(どんだけの人が買うんだろう。)

我が望―少年 南原繁

「我が望」。それは9歳の少年、南原繁が明治32年に高等小学校進学に際して、父宛に覚悟を書いて送った一文の題だ。その一文とは、 私ハ今ヨリ進ミテ高等小学校卒業シ身体ヲ強壮ニシ他国ニ渡リ学ヲ修メ教育ノ法ヲ進歩セシメ以テ国益ヲ広メン事ヲ望ム 南原繁 …

おふろでなんでやねん(絵本)

家族で銭湯に行ったと思いねえ。次から次へとヘンなことばかりだと思いねえ。 おもわず「なんでやねん」とツッコミいれてしまう。そんなおはなし。なんでやねん♪

線は、僕を描く

水墨画がはっきり見える小説は歴史上初じゃないのか。感動もの。マンガ化決定というけど、それより、まずはこれを読んでほしい。初心者の主人公と一緒になって、奥義に近づいていく(と錯覚する)感じ。しかも水墨画に関わる登場人物の容貌までもがひとりひ…

落葉隻語 ことばのかたみ

免疫学の世界的権威であるおじいちゃんが2008年~2009年に読売新聞に連載したエッセイ集。あとがきで自らの末期癌生活を告白しているが「かたみのことば」ではないと断じている。単なる書き散らしと謙遜しつつも、「書き散らしにも真実はあると思う」と括っ…

南原先生を師として(丸山眞男集 第十巻所収)

南原繁さんを知らないので参考文献を漁っていて遭遇した本。四国香川の生んだ、大正昭和の政治学者の偉大さをわたしが感知できたのは、かれの詠んだ歌に触れてのこと。 昭和16年の「十二月八日」と題する歌。 人間の常識を超え学識を超えておこれり 日本世…

「在日」を生きる ある詩人の闘争史 (集英社新書)

金時鐘さんの言葉にはかれの生きざまがそのまま染みついている。佐高信との対談が実にすばらしい牽引役を果たしていることに、世代を超えた相互理解の深さを垣間見た。時鐘さんは在日一世として背負ってきた歴史を憐憫の対象ではなく、社会変革の武器として…

朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)

金時鐘さんの、詩集以外を初めて読む。(昭和27年の)吹田事件のことを何にも知らなかった自分がなさけない。大阪(の吹田の比較的近く)で生まれ育ったわたしなのに、この年になるまで、気にも止めずに生きてきてしまった。周囲にいた在日の子のなかには、…

フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識

自民党が党内に配布している冊子。読みたくもないが、気にはなる。 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/256238

失くした季節 金時鐘四時詩集

新聞で金時鐘さんの報道をみて、詩集を取り出してみた。元左翼で昭和20年代に日本に亡命し、日本語をあやつり詩を編んでこられた、誇り高い在日韓国人というお方。どの詩もこころにくさびを打ち付けられる思いがする。「夏がきらめくことはもうない」と言わ…

改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』 〔演出家としてのベケット〕

20世紀の(わたし的にはわけのわからない)伝統的演劇『ゴドーを待ちながら』を壊して創りつづけた演出家の歩みとその思いをさぐっていくと、今も演じ続けられる名作の秘密が明らかに。そんなことを探る人もまた必要なんだなあと、読み終えてから感嘆した。…

朱いちゃんちゃんこ

著者は何者? と思わずにいられない。奈良の介護施設の話かと思えば、鹿児島弁の話、京都の話、日本語学校の話、・・・著者の体験がそのままの視点で描かれていると確信するばかりの短編がつづく。1950年鹿児島県生まれ。保育士、中学英語通信添削指導員…