2019-01-01から1年間の記事一覧
「色紙に何かかけとか、額にする字を書けとか頼んでくる人が、あとを断たない。」で始まるエッセイは偉大なノーベル賞受賞者湯川秀樹大先生だから言える不満だろう。でも現在も受賞者の皆さんは同じような依頼攻勢に辟易しているに違いない。 さて、昭和46年…
この人を知らない。シンガーソングライターとか。表紙デザインとタイトルに惹かれて読む。たった1行がどこにあるのか、それだけを訪ねて読む。タイトルは170頁にでてくる歌詞「プレイボーイ・ブルー」のなかの1文の変形と判っただけで、肝心のたった1行は作…
谷川さんと辻さんの、1996年1月於池袋の対談(記録)がいい。右目を網膜剥離症で手術して目が不自由になった辻さんは56歳、谷川さん64歳。二人の青少年期からを語り合うやりとりは、意外と若々しい。詩作のくるしみについての話題では、谷川さんが「もう書き…
(なぜだかブログのページが消えている)
書評ではない。読書日記なのに、書評以上に読みたくさせるヤバイ人だ。詩集・歌集が多いのも特徴的。なにより奇天烈(でもあり崇高)なのは、あとがきに「私は本のある世界に生まれたことに感謝すべきなのか。きっと、そうなんだろう」とあって、オススメ!…
いまどきのジュニアたちがうらやましくもあり、かわいそうでもあり。詩人もまた、いまどきの詩人はうらやましくもあり、気の毒でもある。先達の詩に接することで、生き方が変わるとすれば、しあわせというよりほかない。そうなれば、いまどきであるかどうか…
お気に入りの詩「冬の日」 アブサンを飲むと 笑ってる顔が現れ しだいにそれが崩れ オリーブ色の背景に圧されて 消えてしまう。 (中略) どこかで猫が泣く。 電話が鳴る。 鉛のようなものを胸に植えて 痛みを飼いならしてゆく このごろというわけです。 ♪ ♪…
本を横から見たら「死書読見」というタイトルに見えた。ほんとは、『見て読んで書いて、死ぬ』
本のデザインが素敵。「かわいいだけ」を目指してない表紙。著者自作の裏面デザイン。各章タイトルやページ番号に添えられた兎モチーフの図案もさりげなくてイイ。もちろん、著名な日本画だってちゃんと載っている。
古語って、現代人からみたら突飛であったりしても、どこかで今に繋がっているんだから面白い。 百姓:「おほみたから」と訓じてある。大御宝の意で人民、国民をあらわす。 蒼生:「あをひとくさ」と訓じてある。人が共生してますます栄えていくことを、青草…
予約本が届く。来日8年の韓国タレント、カン・ハンナ女史の初歌集は等身大そのものの生活歌が並んでいて、この1冊で彼女の喜怒哀楽はもちろん日韓のはざまにあるこころの揺らぎや、実母への思いなどが素直に読み取れる。詠み人を意識しないで鑑賞するとき、…
昭和47年7月1日創刊の詩誌。表紙絵は点描の犬。どなたの作か、装丁も不詳。32頁しかないが、詩の鑑賞や詩論だけでなく、斬新で飽きない趣向として、主幹?の武田隆子氏による詩劇が劇中歌の楽譜(手書き)とセットで横組みで載っている。あとは欲を言えば、…
愛媛新聞のコラムに出ていた短編小説「鬼謀の人」のつながりで宇和島藩主・伊達宗城のことを読みたくなって、同じく司馬さんの短編集にたどり着く。なのに、惹かれるのは「酔って候」の通り、酒と詩作に夢中だった山内容堂。回り回って、今日もまた「詩」に…
詩は何がしかの狂的な要素を媚薬のようにまぶしている 凄いフレーズだなあ。実際、自殺したような詩人がこんなにいるなんて。 表紙絵はシルヴィア・プラスでもなければアフマートワでもないみたいだけど、モデルがあるのか気になるところ。
手に入らないと、なお読みたい。
江間章子さんの叙情ゆたかな筆致で描かれた佐川ちか、饒正太郎、伊東昌子ら。死後も詩集が出る佐川ちかと違い、脚光を浴びることなく消えそうな者たちと作品に光をあてる、同時代人江間章子さんのぬくもり(のほかにもいろいろ混じった感覚もあろう)が切な…
ひょっとして左川ちかさんの詩があるかな・・・と思えば、在り! 悪い癖で、最近読んだ最新詩集(新編左川ちか詩集「幻の家」)と比べて誤植さがし。・・・の前に、やっぱり旧仮名遣いがいいなあと思う。特に「ゐる」とか。 改行位置の差や、漢字とかなの差…
沢田としきさんの絵を探そうと思っていたら、この本を発見して即買い。絵ひとすじの地味な方かなって勝手に思っていたけど、バンド音楽したり結構多彩というか、音楽と絵画の二足のわらじを履くエネルギッシュな発信者だった、と知って見る目がすこし変わる…
「料理人が青空を握る。」ではじまる表題作「幻の家」(昭和7年)は、改作改題のあとが見てとれるように、もとの詩「死の髭」(昭和6年)と並べて配してある。死を注視する姿勢は変わらないながら、主役の座は、「死」から「幻の家」に移り、「この家は遠…
文庫本バージョンより、この表紙デザインが好き。1992年初版の盛田隆二さんの本(小説らしい)。図書館が放出したリサイクル本の山のなかで異彩の声がした(気がした)。タイトルが意味不明だし、表紙絵の酒瓶の傾き加減?と飲み手との距離感にうっとりしち…
入手困難だった左川ちかさんの詩集が新編第二弾(新かなづかい)の形で発刊されたのを発見し、迷わず即買い。帯に萩原朔太郎の追悼の辞があって、価値の高まる思いさえする。 それが、こちら↓ 左川ちか氏は、最近文壇に於ける 女流詩人の一人者で、 明星的地…
こんなにもわかりやすく、仰天の時間論を語った物理学書は初めてで感動モノ。カルロ・ロヴェッリさん(ホーキングの再来と評判)が凄いのはいうまでもないが、訳者冨永星さんに敬意を表します。それと、偉大なる詩人ホラティウスにも最大限の賛辞を贈るよ。 …
東北ゆかりの慰霊のことば、冤霊をタイトルに冠した一連の句が並んでいる。藤原清衡のことばが(東日本大震災という辛い記憶によって)蘇ったのだ。否、このゆう子さんが蘇らせたのだ。嗚呼、敬礼そして掌を合わせる。 冤霊てふ言葉知りたる冬の寺 冤霊に列…
柳田国男さんの『国語の将来』が読みたくて借りる。標準語教育によって、「標準語で物を考える大事」を説いている。こんにち当たり前と思っていることは当たり前ではないのだ。わたしにとっての発見は多々有るが、ひとつ引用してみる。 頑固とかわからずやと…
はまっているテーマの本。謎に満ちた寺院と様式だけに、想像だけで書くなら何でも書けるのだが、それを戒める体にして引いてある言葉が染みる。 「本に書かれたものは、書かれなかったものの、氷山の一角なのだから」(開高健)。 嗚呼、健さんてかっこいい…
平泉について、また斉藤利男さんの著をもう一冊読む。清衡の多宝塔建立が当時、都で評判になり多宝塔建立ブームとなったというから面白いじゃないか。でも名前のコピーだけで、釈迦・多宝のニ仏並座スタイルは平泉だけだったというから、平泉文化の特異性が…
著者は岩手に生まれ、民間企業をへて岩手の博物館に勤務し、さらに地元の大学教授から平泉文化遺産センター館長をされている、平泉文化のプロフェッショナル。清衡を熱心な法華経信者だったと断定している。そのうえで「釈迦と多宝との中間を通る新たな形式…
中尊寺の原初形態として、吾妻鏡にでてくる「多宝寺」「釈迦・多宝像」について語っている、数少ない研究者の一人。現存していないからって、たいてい無視してるんだよね。多宝如来は法華経に登場して重要な役目を担うんだけれど、一般には知名度低いのが理…
森博嗣さんは人間関係で悩まない? かねがね、かれのエッセイは読みやすくて説得力があると思ってきたが、ひとつ疑問がわいた。本書のなかで、仕事を辞める人全般について述べるくだりで、「問題はすべて人間関係」と断じているんだけれど、驚愕の一文に出遭…