junyoのほんだな

2020/11に移転しました。移転先はプロフィールに。

エヴァンゲリオン×創作ネーミング辞典 02

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2017年発売の愛想のない辞典(一番右の写真。こんなの買う奇特な人間いるかな?)が、2018年にエヴァンゲリオンとコラボしておしゃれなカバー冊子に変身していた。辞典の有用性がかわるわけではないが、所持することで創作者をその気にさせる効果はあるかもしれない。ブックカバーは重要。

CATALOGUE of GIFT BOOKS 2020-2021

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本屋さんで貰ったカタログ誌。阿刀田高さんが発起人となって、「本を贈る」習慣づくりにと作成されたもよう。34人の著名人がそれぞれ3冊推薦してるのだが、阿刀田さんはトップバッターを秋元康にゆずって二番手に。そして『広辞苑第七版』を推す理由として(実用性は当たり前として)出版社に対する応援、辞書編集事業の応援なんてことを挙げている。 それを正面から謳いますか、凄いなあ。と感歎しつつ、それくらい出版業界、辞典業界が大変なんだろうなとしんみりしてしまった。

あと気になったのは、フラワーアーティストニコライ・バーグマンさん。若いのに日本語の本を紹介? と思ったらこの方、19歳で来日して日本に魅了されて、20年とか。よくみれば2冊は日本の出版だが、ぜひに、と推している『The Monocle Book of Japan』は英書で7,120円(税別)。うーん、「本を贈る」ってスタンスからすると、ややハードルが高いぞよ。

女らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号/らしさについて考える①)

f:id:junyobook:20201105184433p:plain「らしさ」についての論考トップはやはり、女らしさ。民俗学者らしく柳田國男先生の著述をあげているなかに、昭和17年刊行開始の「女性叢書」に触れて、大平洋戦争下に女性の読者を想定した意欲的シリーズと評している。でも、さらに掘り下げるなら柳田研究の雄、福田アジオ先生のごとく、柳田先生の女性観はどこまでいっても男性社会の補助としての女性といったあたりまで突っ込んで欲しいところ。つまり戦時下にあって為政者にいいように利用された思想にも見えるのではないか。(限られた紙数でそこまで要求しては申し訳ないのだけれど。)

戦時中に関して言うなら、同じく紹介されている「婦女新聞」(明治33年創刊)が昭和17年3月で廃刊になった経緯も知りたいところだ。女性の投稿の場として福島四郎(1874-1945)なる人物が私費を投じ単身で編集発行をはじめた、その真意やら社会の受け止めについてももっと知りたくなった。(つまり執筆者畑中さんの文章に思いっきり感化されちまったということ。多謝)

 

 

戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり

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想定をはるかに凌駕。従軍女性というのを看護師や通信士くらいと決めつけていたが、狙撃兵・地雷班・高射砲兵・砲兵師団・ 飛行士・歩兵・・・等に当時10代20代のガールやレディたちが参戦していた事実。その数100万人を超えるソ連人女性とは。それ以外にも地下活動家とくくられる人たちも。証言者は、いうまでもなく生き残った者だけで、命を落とした人々の胸中は想像することもかなわない。

戦時下の少年兵と同様、祖国の英雄となるべく志願した者も少なくないようだし、親の意向で志願させられた者、胎児を産めずに復讐心を燃やして挑んだ者、さまざま。従軍中の苦労とても、女性ならではの苦悩も。。。あてがわれる下着が男物ばかりであったなどは、笑ってくれといわんばかりの、涙も涸れる体験談。

しかも戦後に、そうした事実を隠して生きなければ、同性ながら従軍しなかった女性達から蔑視されるなど、男以上に過酷な体験を強いられていたとは。

最大の驚愕は、そうした事実をわたしは何も知らずに今まで生きてきてしまったということ。

せめてもの慰めは、多読乱読のおかげで本書にも出遭えたということくらいか。なればこそ、これからも手当たり次第に本と向き合っていこうと思うのみ。

徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)

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ロシア文学と聞いただけで読書中に固有名詞がこんがらがるイメージを抱いてしまう身としては、ロシア・東欧文学がご専門の先生のことばは尊敬対象そのものとなる? と思って読めばまさにその通り。ベラルーシ(聞いたことあっても、どのあたりか定かで無い)の記録文学作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(後述で彼女とあるので性別は女性だと判明)の代表作『戦争は女の顔をしていない』(聞いたことがあるけど、読んだ記憶はない。邦訳はあるのかしらんと思ったら、邦訳だけでなくコミックまで出ていた! ノーベル賞作家でした)を概説して、アレクシエーヴィチさんのまなざしの優しさを称賛しつつ、徹底して戦争と死に向き合う覚悟が「平和と生のもっとも力強い擁護になるという逆説」と解説してくれる。そして、「日本でこそ読まれるべき作家」と推奨されてある。だから、読まなくっちゃ。(即刻、買いました。)

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夢の舟唄(德永民平詩集)

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気になった作品(の一節)。

*********

涙で涙を癒しながら

老いた者たちが集まって参りました

時雨にぬれて かなしみの衣をまとい

風に吹かれて あなたをおもい

日の過ぎるのも早く

ふたたび津田山で

少し早い一回忌に 椎の実を拾って帰りました

*********

一回忌なんて言葉の赦されるのは詩人だけ。詩人って寺の人と似ているようで別者。

気になったのは、それだけ。

 

 

 

 

 

 ISBNのない1994年の本。

 

わさびの日本史 (著)山根京子

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 わさび愛がすばらしい。植物学の先生がDNA研究としてルーツを辿って中国へ渡るのはわかるが、学問の枠をはみ出して古文書のなかを探索してさまようのは、先駆者のいない領域というのも大きかろう。栽培植物起源学。初めて聞いたジャンル。

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若冲の野菜の涅槃図(正式名称は違う、というのは以前にも書いたが、わたしはそう呼ぶ)のどこに山葵(わさび)が? 左下隅の楕円マークの処といわれても、即座にはわからないレベルだが、確と見いだしてるのは、さすが。

 

余録としてのコラムも面白い。文化文政期にあったカステラにわさびという賞味法は意外とイケるらしい。   最後に著者の愛に応えて、これだけはコピペしておこう。​

栽培品種は、失われたら復元困難 ・・・系統維持が非常に難しく、・・・山に行けば野生が自生しているから大丈夫、という考えは間違いである。・・・長い時間をかけてできた品種は、一度失われてしまったら、容易には復元できないのだ。(p217)

 

 一次産業の維持が危ういこの国で、栽培植物起源学は、これから注目度が高まるかもしれない。

 
 
 

国家への道順(著)柳美里

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 この一冊に出遭うために、いままで書籍の海山を渉猟してきたといってもいいくらい魂を揺さぶられる念いだ。
柳さんに問われているのは、わたし。
「解っていますか?」
(ご免なさいと言いかけて呑み込むことしかできない)
在日の気持ちも、慰安婦問題の根っこも、38度線の重さも、彼女のしめす「最悪」も、わかったふりして生きてきました。。。

「最悪」とは、人間が自己の利益にのみ目を奪われ、他者の悲惨や苦痛に無関心なことだと、わたしは思います。(p.194)

正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸

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興味をそそるタイトルとテーマなのに、読んでいるうちにウンザリするのは、数学理論のはずなのにアダムとイヴがどうしたこうしたとの譬喩らしき解説が、それ必要か? という感じで再々登場すること。

英語圏をはじめとする国々では分かりやすいのかもしれんが、・・・ああ残念。途中早早にリタイア。

 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江

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ルソー繋がりで読んだ一冊に夢中になった! もうこの一冊精読だけでブログを書きたい(もしも、わたしがもう一人いるなら、という条件付きで)。ルソーの奇天烈人生も好きだが、本書の教授重田さんがイイ、惚れちゃいそう。。。(「人造人間」の文字入りTシャツ着てるあたりから変人確定? ほれはしないけど)真面目な話として、社会契約論の現代的意義を明らかにしていく文筆も、あれこれ楽屋話を晒してくれるひょうきんぶりも、好感度高いよ。

さて、ルソーの思想と『社会契約論』の文章はこう紹介されている。

彼の思想は、閃光のごとく輝くものを、無理やり線状の文章に落としている。だからいつも言葉が足りないのだ。その表現力は天才的だが、それでも言葉はいつもイメージに遅れてしか到達しない。そのため彼自身にはありありと現前しているものが、読んでいる側にはなかなかつかめないのだ。

重田さんは、こうした前提に立って、独創的な解釈を持ち出そうというのではない。現代に生かすために、特異な視点(それを探し当てることこそが鍵らしい)一つに絞って読み込んでいくことで、「一般意思」なる概念の新たな見え方が(ロールズに託して)出来たというわけだ。それは同時代そして後世の思想家達がルソーを如何に読んだかという異同探究を通じて明らかになっていく。思想史それもルソーの説いた、破滅からの再出発(?)の起源となる「一般意思」がこんなに面白いとは知らなかった。

 

40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操

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キャラは「あぶらみちゃん」とふざけてるが、これ、下は40代から上は80代くらいまで続々シリーズ出版されてる、まじめ(に金儲け上手)な体操紹介まんがだった。

 

追記>なんと100歳まで元気を目指してた。どんだけの世代に売りまくっているのだ。

スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史

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生物学者福岡伸一先生の大推薦なんて賛辞があったら、いかがわしくないんだ!と安心して入手。

生物の世界に見られる普遍性を敷衍して、社会活動・経済活動までも生命的な営みに擬して論述した壮大なスケール物語のはじまりだ。

のっけから、動物の代謝率や生涯心拍数という特異な数値を紹介して、生物の多様性・複雑性を超越したシンプルな法則を感じさせてくれる。 

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

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多数決のいかがわしさを感じていたものの、代替案としてボルダルール以外に幾つもあるなんて知らなかった。有権者なら必読の凄い本だよ。

それ以上にショックだったのは、フランス革命の時点でパリではこうした研究・議論が沸騰していたことと、ルソーの社会契約論がこの問題に言及していること。過去の世界史学習ではそんなことちっとも学んでこなかった愚かしさ、恥ずかしさだ。

本書では改憲論議にも触れて、多数決のあり方、国民投票のあり方にも数学的に意見しているし、2009年に与党となった民主党マニフェストで謳っていた周波数オークションの問題も述べている。ああ、ちゃんとこういうことを勉強するように教育設計しないのは現行政府の策謀と確信した。



世界で一番貧しい大統領と呼ばれたホセ・ムヒカ

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「私たちが発明した代表民主制とは、多数派の人が決定権を持つ制度だとしたら、各国の指導者は、少数派ではなく多数派のような暮らしをすべきです」

 (ウルグアイの元大統領のことば)

 

月とコーヒー(著)吉田篤弘

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吉田篤弘と聞いてピンとこなかったけどクラフト・エヴィング商會のお方らしい粋な冊子。やや大きめの文庫本って感じの仕上がり。(サイズを見せるために下に配置したのは新書本。)

夜のお休み前に読むとの設定で編まれた短編小説集。みんな食べ物の話が出てくるのだけれど、「寝しなに読んでいただくことを想定していたので、あまりこってりした味にならないよう塩加減」したと、あとがきにある。ほんと、そんな出来映え。欲張って一気読みするのは控えようとおもう。