2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧
なかなか斬新で奥付の所在がわからなかった。絵本側からすると36~37頁、詩の側から読むと28~29頁にある(刊行は2004年。)夕刻以降のすばらしい写真の数々。絵本は全面写真にかな文字だけを重ねて、詩は写真と距離を置いてのレイアウト。 唯一の残念は、詩…
またまた角田光代さんの文と顔写真に遭遇。今月3度目。(新潮社つながりといえば相違ないが、それにしても。。。) さて、好きな一冊の、気に入った一行を選んでエッセイを書けというコンクール対象図書の文庫が100冊。当然、選考委員角田さんのも有る。…
本屋で何気なく最初に手にした本が、まさかの戦争孤児の物語。今夏はこの流れに乗っているようだ。(大字のタイトルだけ見たときは、認知症徘徊者の話かと。)愛媛新聞による小学生読書感想文の課題図書で、ダブル帯の1枚目をめくると、ノンフィクションの名…
『戦争孤児たちの戦後史』に出てきた舵子の登場する小説。吉村昭さんは戦中戦後を題材に、体験と綿密な取材で定評がある。 かつて瀬戸内のある島の漁師村ではお金を出して、少年らを愛媛県から伊予子と称して年季奉公に連れて来て、舵子として船で働かせてい…
文字通りの栞(2葉であ~る)。詩集の帯に名を連ねる阪西敦子・鴇田智哉両氏がそれぞれお気に入りと思しき句たちを選んで鑑賞している。 わたしにとって面白いのは、おふたりが用いるカタカナ語たち。持ち味を出しつつも、それが句作者の輪郭を際立たせてい…
1955~57年に28連敗という不名誉な記録を立てた、プロ野球権藤正利投手について「負け続けてもこれだけ試合に出たのは高い実力を証明している」と称賛したのは江夏豊さん。 今朝の愛媛新聞コラムでは「弱小球団にいた悲運だろう」としつつも、「首脳陣の揺る…
銀シャリの橋本直(なお)ではない。ずっと年長の橋本直(すなお)さんの詩集。すなお氏は、なおさんをどう思っているのだろう。それはさておき、なかなか癖のある句たちが居並ぶ。 売れっ子俳人の阪西敦子さんの評によれば、知的でワイルドでスマートだけれ…
著者・森まゆみさんの「子規」好き好きオーラがあふれていて、時として史実から当時の子規さんの表情を想像して愉しんだりしているふうで、それが、ある意味壮絶な子規さんの天衣無縫っぷりと相俟って、たのしく読める。 子規とは、言わずと知れた俳人、文庫…
数年前「いだてん」が国民(わたしを除く)の注目を集めていた頃から、幻の東京オリンピックが話題にのぼることが屡々あった。その後はそんなことが無かったかのように2020年東京開催準備へと盛り上がりを見せたが、コロナ禍によって、再び1940年の幻大会の…
戦後75年のシリーズ刊行本。知ってるようで何も知らない、戦争孤児たちのこと。たとえば、舵子問題。舵子事件だって初耳。これは古くから漁業であった児童売買などが根底にあるが、戦争孤児もまたその中に組み込まれたのだ。そうした希有な証言や文献を、主…
アイヌ文化にまつわる本がちょこちょこ出てるように思っていて遭遇した一冊。昨年のアイヌ新法成立より4年も前からつづくロングセラーらしい。漫画は漫画として楽しみ、その上、アイヌ文化を学べる秀作みたい。アイヌ語研究の第一人者・中川裕さんがアイヌ語…
銀海の巨星。初めて知った尊称だが、表紙絵のデザイン画をしらない人はないだろう。先週見た最新の色覚異常検査表の生みの親、石原忍さんの末永く伝承したい偉業と人徳がコンパクトにまとめられている。忘れてならないのは、世界的功績もさることながら、晩…
近年、女性刑事ものを書いている小説家六道慧さんが、一時こういう時代ものも書いていたんだね。本作はシリーズの第一作だが、時代劇一条で書き連ねたベテランかと思うくらいの筆致は小気味よい。女性の活躍社会を(口先で)謳う平成の世にふさわしい作でも…
昨日につづき詩歌集の一章(西アジア)から、今日は詩たちを読んだ。県外生まれで愛媛県東温市在住ってことも親近感わく要素。テレビのドキュメンタリー番組風の書き出しで描かれたイラクの神風。遠い世界のようで、風は黄砂とともに非日常をはこんで日本ま…
詩歌集の一章(西アジア)採録の句たちの中で、わたしの西アジア感に最もフィットした作品群。 つつみ眞乃さんの句はもともと好きなタイプだが、「中村医師の砂漠の青史とこしなへ」を代表格として、われら未知の人間にとってもイメージしやすく、それでいて…
コールサック社の最新刊。読みたいと発起したきっかけはデイヴィッド・クリーガーさんの詩『イラクの子供達には名前があった』(訳者?)の一節を知り、かれの詩とその舞台イラクにまつわる何かに触れたくなったからだ。本書は裏表紙に列なった作者たちの数…
色盲、色弱と呼ばれていた色覚異常の検査は現在の義務教育では必須検査でないらしい。 日本人医師石原忍先生が大正6年にあみだした検査表は更新をかさね続け、世界中で使用されているという。 今年出版された本書は眼科医らに活用されるようだが、はてさて…
パウル・ツェランの詩に「光冠(コロナ)」というのがあった。コロナ禍に読むのも、こじ付けだろうと意味があるに違いない。何といってもアウシュビッツの悪政下に生きたパウル・ツェランの言葉なんだから。
遂に読んだパウル・ツェランの詩集。苦悶に生きた忍辱の化身の作品におどろくほど登場する「石」というモチーフ。ぼくら石たち・・・ 代表的な詩の前半を記し置く。題して「斜面」 ぼくのかたわらにきみは生きる、ぼくとおなじようにーー 夜のおちくぼんだ頬…
著者森茉莉さん自らをモチーフにした主人公・牟礼魔利(むれ・まりあ)は稀代の変人だ。貧乏小説家ながら独自の贅沢観に彩られた装飾に囲まれて暮らしている、との設定の描写は執拗このうえない。それ以上に驚きは、彼女の父の設定がその名も欧外(おうがい…
時折思い出しては眺める詩集。これを超える詩をわたしは知らない。ましてや、注解する者を注解する知力も勇気も無い。歌人逝去を悼むばかり。合掌
扉をめくると「故・東由多加に捧げる」とあり、次の前付けにはパウル・ツェランの詩の一節が掲げられている。それだけで、充分に重い。 この人たちのような凄まじき半生を背負っていないと、文学に生きられないのかと考えただけで息苦しい。わたしは、この流…
発売当時、読みかけて途中で閉じた記憶がある。きょう、何となく文庫版の末尾に書かれたリリーフランキーさんの感想文(解説とよぶらしいが)に触発されて一気読みできた。リリーフランキーさん(リリーさんと呼んでいいのかな)も、余命わずかの母御が携え…
あかちゃん絵本の絵を描いてる人と同一人物と思えない造形美術作品の作者は、岡崎乾二郎(絵本では、おかざきけんじろう名義)さん。きょうの愛媛新聞文化欄に映画監督・中村祐子さんがどちらも紹介していて、言葉になる手前の世界や「抽象」の枠にとどまら…
俳句にでてきた蟭螟(しょうめい)という虫のことが知りたくて、和漢三才図会を探していたら、なかなか面白くてハマる。たとえばコクゾウ虫の別名「よなむし」の漢字表記が、なんじゃこりゃという感じ。 肝心の蟭螟(しょうめい)は挿し絵が無くて残念。もち…
きらいじゃないです、ぬめっとしてたり、鼻につんときたりする、五感に接触してくるように感じる言葉たち。 一番お気に入りは(今日の気分では)「石を嗅ぐ」と題した一篇。 ほんの一部を抜き書きすると。。。 部屋はニンゲンの酸っぱいにおいで充満している…
大震災、大津波の被災地のその後を、仮設店舗をいとなむ独身男と母とわずかばかりの客の日常から描いている。リアルなら報道からこぼれるであろう、ささやかな不安の連鎖反応。被災者とそうでない者、健常者とそうでない者、そんな区分けに意味などあるのか…
今号ほど満足度至高な月があったろうか。未曾有のコロナ禍まっ只中で、収録された各篇がすべて心地よい緊張感を漲らせつつ、わくわく感一杯だ。採り上げられる話題書は残らず入手したい衝動に。 原爆の図丸木美術館学芸員・岡村幸宣さんの近著『未来へ、原爆…
新著「ホモサピエンス詩集」を出した著者(詩人)の四元康祐さんの本を読みたくなって巡りあった一冊。 吉本昭洋の物語も、中原中也の詩との出会いに始まった。嗚呼、中原中也はどんだけすごいんだよ。。。読者の一人、わたしは詩人じゃないけど。。。。
没後20年のイラスト作品集。すごいなあ。奇天烈な、想像の産物たち。緑の薔薇みたいな「人造花」は別名整形美容花だって。「深夜放草」という名の植物とか。多くを語らずに絵で感じさせる手法。でも実際には、深く考えずに見るだけで十分愉しい。