junyoのほんだな

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2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

幸福な絶望

平静29年をしめくくるに当たり、今のわたしに相応しい?一冊。 詩人・小説家である坂口恭平は、かれの妻にいわせると"躁鬱王子"。そんな命名をしてしまう妻とのやりとりを赤裸々につづった「不安西遊記」は圧巻、あっか~ん。彼の小説が出来上がる影に、そん…

もう一杯だけ飲んで帰ろう。

角田光代女史が若い夫と共著で出した酒飲みエッセー集。 おなじ店で一緒に飲み食いしてても感じることは違う。至ってあたりまえなんだけれど、それをあえて文章にして並べてみるとこうなったという本。この夫婦の力関係みたいなものも自ずと見えてくる。

犬物語(『社会百面相』岩波文庫版 下巻所収)

語りが犬。犬の視点でまわりの人間模様をえがいた、内田魯庵の短編小説。 吾輩は猫である、よりもこっちのほうが古いんだ。

蜜蜂と遠雷

ピアノコンクールを舞台に、音楽を言葉で紡いだ秀作といった好評を再々目にしたものだから、つい読んでしまった。 でも正直がっかりした。わたしにそういう世界を読み取る感性が欠落しているのかもしれないが、わたしには音楽の旋律が聞こえなかった。ただ多…

現実宿り

ふしぎな気分のまま先へ先へと読まずにおれなくなる文章。小説か? ふと丸山健二の文章を思い起こした。全然違うんだけど。作者の思いがやけに強烈な印象を発し続けているところが似ているのか。 内容紹介(抜粋) 著者が初めて「自分ではないものに、書かさ…

犬と歩けば

来年はいぬ年だなと思って図書館で「犬」にまつわる本を物色していて出会った一冊。 古本屋の主(著者)とカミさんが愛した犬の晩年や死後の思い出などを綴ったエッセー集。希代の古書店作家は犬と歩くと漱石先生とも出会ってしまうのであった。

やっちゃ場伝 青物市場に伝承された400年の世相と食

食とその周辺にまつわる初耳ネタが満載。 江戸開府にあたって徳川家康のなした都市計画とその実行力はすごい。単なるワンマンではなく、イイ意味で縁故を大事にした手腕はあっぱれ。(とはいえ平成の時代にこれをやったらアウトでしょ、やっぱり。) 人に話…

ヒトは何故それを食べるのか

春夏秋冬ごとにさまざまな食にまつわる起源やウンチクを4ページずつくらいの文量で綴っている。 どこから読んでもたのしいし、きっとためになる。 いまさらながら興味がわいたのは、骨を残さない動物と種を残さない植物の食起源について、想像するしかないっ…

詩と死をむすぶもの

詩と死について語る人がここにもいた。うちの本だなにあったのが目に留まる。 内容(「BOOK」データベースより) 看取る人、逝く人。死を目前にした人は、何を思い訴えるのか―。「命のエンディング」までの様々な臨床エピソードを、ホスピス医療に携わる医師…

犬は詩人を裏切らない

大阪の詩人・清水正一の詩人エッセー。かねがね読みたかった本が大阪の中之島図書館にあるので、大阪に赴いたついでに立ち寄って読んできた。限られた時間(わずか15分)であったが感動した。画像はそのときに写メしたもの。 詩と死は双生児、だなんて言えそ…

後藤を待ちながら(『日曜日の夕刊』所収)

昨日の『ゴドーを待ちながら』のもじり。ただそれだけ。 後藤が最後まで登場しないところだけが同じ。もう一ひねりほしいところ。でも、あらためてサミュエル・ベケット(『ゴドーを待ちながら』著者)のすごさが感じられたのは収穫か。

ゴドーを待ちながら

タイトルだけは知ってる名作戯曲を初めて読んだ。本来は演劇を観てたのしむんだろうが、台本の文章だけでも笑える。半世紀以上むかしの外国喜劇(正しくは悲喜劇)であることを意識しないで読み通せる。すごいことだ。 最初から最後まで登場しないゴドーがあ…

世界の名作 数理パズル

2017年11月発行の本書は、30年前の講談社『選びに選んだスーパー・パズル』をベースに全面改訂したもの。来年卒寿(90歳)をむかえる著者のパズル集大成か。著者はこの本の特徴として、問題ごとにその源流を明らかにしたこと。単なるパズル本として楽しめる…

鎌倉山 顕証寺 御利益談集(2017)

信徒の生の声が尊い。

言葉に命を~ダーリの辞典ができるまで

とんでもなく凄い、そして愉しい人間がいるものだ。 「真実のため、祖国のため、ロシア語のため、言葉のためなら、わたしはナイフにでもよじ登ってみせる」と私信に綴っている。 辞典とはことばのいみを調べるためにあるとばかり思っている人が多いに違いな…

忘れられた日本人

他の方の本を読んでいて引用文献にあたりたくなることは少なくない。そんなふうにして、この本を手にするのは何度目だろう。 読むたびに新たな驚きがあるから、(関心の寄せどころがどんどん変化してる自分に気づく)再読はたのしい。 「辻」は交差点とはち…

イスラーム思想を読みとく

イスラーム思想のことを(わたしをふくむ)日本人はちっとも理解していないのだ。 「酒をやめられないからムスリムにはなれない」なんて思っている日本人は結構多いんじゃなかろうか。イスラム教徒としての形式の部分をいろいろ知っているばかりに、わかった…

分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流

かつて日本の政治モデルであった英国の民主主義がEU離脱などで大きく揺れた。 著者も、離脱はなかろうと楽観視していた一人と心境を明かす。注視すべきは、EUからどのように離脱するかどうかもさることながら、二大政党のそれぞれの瓦解とその原因、また…

中世の借金事情

数日前に『負債論』を読んだ衝撃が冷めやらぬうちに、わが家の本棚にあった本が目に留まる。いつ買ったかすら憶えていないし、内容も記憶にない。たぶん当時はさほど面白く感じなかったようだ。 ところが、今日はなんだか、ふふふ、という気分に。読むべき時…

竹内理三 人と学問

竹内先生(1907-1997)は日本の歴史学の基礎史料と基盤を築かれた偉人。著者は(たぶん)そんなにないが、史料編纂の量ははんぱない。奈良時代、平安時代、鎌倉時代の古文書の集成に生涯をささげられたといっても過言ではない。本書はそんな先生の思い出を集…

日本人の9割に英語はいらない

本を読め、と紹介している本の筆頭が『ビジネス英語 類語使い分け辞典』。はあ~、日本人の1割のためにまずこれを掲げるか。

負債論

すごい本である。★★★ 800ページを超える重厚な書なのに、冒頭からグイグイひきこまれる。 借りたお金は返さなければいけない、というのは実は倫理的な正しさであって、経済学的には真実ではなかった。ええええ、どういうこと? てあたりから人類の歴史がひも…

海の見える理髪店

結末に、おおっ・・・と声が出そうになった。熟練の床屋にあるかもしれないし、そんなわけないだろうという技能が光を放つ。床屋が客に向かってそれを明かす瞬間がいい。(ねたばれ避けたら、こんな感想になった。)

一流の人は空気を読まない

空気を読まない人が一流とは限らないのは真理だなあ。

怨霊とは何か

日本の歴史において、怨霊鎮魂の思想と儀礼がやがて怨親平等の思想へと移り変わっていくあたりの解説は新鮮であった。戦没者供養のありかたが源頼朝あたりで方向をかえ、やがて蒙古襲来のあとに明確になったとされる。 もっとくわしく学びたい。

知ろうとすること。

3.11以後だからこそ、ちゃんと考えておきたい内容だ。事実をしることの重要性、しろうとする姿勢の尊さ。 非常時などには、科学的というか客観的な知識・知見にもとづいて物を言ったり行動したりしなければ人々をまどわせたり混乱させたりしてしまう。 内容…

近藤誠の家庭の医学

既存の癌治療を批判しつづけている医学博士。そのために、はっきりいって医学界から締め出されている感はあるものの、大量の本を出版して晩年にはがん研究所セカンドオピニオン外来を設立して社会的ステータスを確立した。本書は医学界の一面として読むのが…

ヒトはどこまで進化するのか

今日はE.T.の日。この本のなかで大きな比重を占める、地球外生物に関する妄想的な論理展開は、じつにたのしい。地球外生物について知るためには進化論の学習が必要なのだ。 進化論はまだ謎が残されていて、完成していない。著者の理論は必ずしも多数派の声で…

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

大阪のある書店で週間ランキング新書の部1位にかがやいている本。 人口減少問題の本質を勘違いしている人が少なくない現実がある。そこを理解することから始めよう。典型は、よその市町村から転入を促進して成果をあげ、得意になっている公務員やプロジェク…

数学の二つの心

日本の数学教育の根本的な誤解を読者につきつけて、数学って何なのか、著者のいう「数学する」とはいかなる楽しみ(同時に苦しみ)なのかを、いろんな数学概念をテーマに論じている。現行の、つまり一般に考えられている解説を「おもての心」と称し、著者が…