junyoのほんだな

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2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

僧子虎鶏虫のゲーム(『現代タイのポストモダン短編集』所収)

タイ式じゃんけんなのだろう。僧子虎鶏虫のゲーム。冒頭に遊びのルールが示されてるが、その時点で頭がついて行かない。 僧は子に勝つ (僧は子を鞭打つ) 子は虫に勝つ (子は虫を潰す) 虎は鶏と子と僧に勝つ (虎は鶏と子と僧を食う) 鶏は虫と僧と子に勝…

オルテガ・イ・ガセットにおける人生論

オルテガの『大衆の反逆』が面白かったのでかれに関する本を探してみた。(どうにも宗教くさいと思ったら案の定、カトリック司祭の著だった。一応、哲学解説ではあるので読み通したのだが)オルテガ初期の政治談義ほどわくわく感は無い。かれの思想的立ち位…

大衆の反逆 (白水Uブックス) 新書

NHK教育TV100分で名著でやっていたのが面白そうで(昨日で終わったらしい)読んでみた。100年ほど昔の著なのに、政治について考える時ちっとも古くない。 この版は「フランス人のための序文」が添えられた、フランス語版の翻訳。フランス革命のあとにも…

映画は文学をあきらめない ひとつの物語からもうひとつの物語へ

小説の映画化はひとつの潮流としてできあがっているが、いつも成功しているとは限らないだろう。興行的にどうこういう以前の問題として。文学者はどう思っているのか、映画監督はなにを狙っているのか、視聴者はなにを期待し何に満足するのか、決して一般論…

『「古今和歌集」の創造力』(NHKブックス1254)

子規によって否定されたような形の古今和歌集だが、やまとごころの美意識原点は古今和歌集にこそあるにちがいない。さまざまな見立てに込められた想像力が創造力へ昇華したのかな? そのあたりを編集論などの立場から読み解いていく丹念な論考はたしかな手応…

子規會誌 16号

松山子規会が発行している季刊誌の昭和58年1月号。碧梧桐の一代略記のほかに、かれの句碑を(執筆者瓜生敏一さんの知る範囲で)年代順に建立地とともに紹介してある。なかでも昭和50年代に各地に次々と建てられたのは、なにかしらのブームでもあったのだろう…

碧梧桐百句

碧梧桐の句から100を選んで鑑賞しているが、解説に登場する句をふくめると300を超えている。巻末に掲載句すべてを五十音順にならべた索引が付いている心遣いがうれしい。個人的には碧梧桐の作品は凝っていて、(好きではあるが)こむつかしいと感じるのだが…

不道徳教育講座 (角川文庫)

愛媛新聞に作詞家児玉雨子さんが採り上げてエッセイを綴っていた。「今なら炎上してしまいそうな文もある」というので読んでみた。わたしの知っている三島由紀夫とは趣のちがって戯けた、でも根っこは三島由紀夫らしい、じわりと刺さる短編集。冒頭「知らな…

忘れられた俳人 河東碧梧桐 (平凡社新書)

碧梧桐のことを「忘れられた俳人」とまで言うか。無論、河東碧梧桐を愛してやまないから上梓したんだろうけど。そんな憐憫の情をかけられてヘキちゃん(勝手にそう呼ばせてもらうよ。寿限無じゃないが名前が長いから)は喜ぶのかなあ。なるほど革新の志半ば…

ねえねえはかせ、月のうさぎは何さいなの? (はかせのわくわく科学絵本)

阪大の寺田健太郎教授が科学雑誌ネイチャーに発表した論文を題材に、みずから絵本をつくったそうな。月の誕生物語をどこまで平易に解きほぐせたのか、読んでみたい、見てみたい。(つまり、まだ読んでない。)

河東碧梧桐 子規門の革命児

松山の子規記念博物館でおこなわれた特別企画展の記念誌。写真たっぷり。碧梧桐の顔写真を初めてみたが、想像と違ってダンディだなあ。書簡も写真と解説が豊富で、時代の空気が感じられてたのしい。

The Taste of Salt (Paperback)

マーサ・サウスゲートの小説。水泳をするアフリカ系アメリカ人主人公ジョシーの台詞「わたしのような育てられ方をした……つまり都会で育った黒人の大半がそうだけど、水は苦手なの」……この一文は『なぜ人間は泳ぐのか?』に出ていた。わたしはこの一行に惹か…

魚群記 (目取真俊短篇小説選集1)

先週(2月5日)読んだ目取真俊さんの20代作品集。沖縄をしらないわたしが言うのもおかしいが、沖縄らしい、戦後の終わらない沖縄らしさがここかしこに滲んでいる。その"らしさ"を端的にイメージさせているのは魚のぬめりや手触り感が精緻に描きつくされてい…

なぜ人間は泳ぐのか?――水泳をめぐる歴史、現在、未来

米国元ABCキャスターのニューヨーカーの手になる、面白くてためになる水泳史。水泳に関わる競技関係者だけでなく科学的研究者のポジティブな声をたくさん拾い集めていて、現代からしたら眉唾モノに見える話題も楽しく紹介している。感嘆したのは、負の歴史を…

「若者」とは誰か【増補新版】: アイデンティティの30年

今どきの若者は、なんて話題はいつの時代にもあるとはいえ、その実態は○○世代なんて言葉に象徴されて、しかもみな○○世代を背負ったまま加齢していく。そうした流れについては、周知であったと思われるが、今や、アイデンティティの多元化という概念が生まれ…

今あるもので「あか抜けた」部屋になる。

ハウツー本として、突き抜けてるなあ。巷には100均グッズでどうとかこうとか、とにかく少なからず金を使わせようとする策略が溢れかえっているなかで、何にもいらないという潔さ。センスさえも不要といわれてびっくりするが、読んでみたら、なるほど。 もち…

一家に一本で家中ピッカピカ お掃除ブラシJ

20万本売れた掃除用ブラシを、さらに宣伝する本。そこまでのきれい好き人間には魅力的な本なのかな? そんなブラシに興味ないわたしではあるが、この本を買う人の心理をはかりかねている。本買ってから、ブラシを買うのかなあ。

隈研吾という身体 ―自らを語る (建築・都市レビュー叢書)

「建築・都市レビュー叢書」だって。とてもマニアックな観がある。シリーズ化できるくらい現代建築を語れるってことらしい。少年時代に大阪万博を経験したかれは当時すでに、丹下健三・黒川紀章の作品に冷めた視線を送っていた建築少年だ。本書は当然のごと…

かあちゃん取扱説明書

男児と母ちゃん、父ちゃんの個性が際立っていて、たのしい児童文学。その昔、口うるさいかあちゃん対応に手こずった覚えのあるおとなも童心に返って無邪気に一気読みしよう。実にほのぼの。

江戸の古本屋 近世書肆のしごと

江戸の本屋とは古本屋こそ表看板に似つかわしい。当時の商習慣を版木屋やその他の職人、本屋仲間の実態、株取引など多面的に描いて見せる、なかなかの研究書になってる。その和装本の世界が明治期に洋装本の台頭ですっかり零落していく。それでもしぶとく生…

圏外編集者

独自のスタイルで本をつくり続けている編集者(ときにはジャーナリスト。他人から評論家とかアーティストとよばれるのは抵抗あるらしい)都築響一(1956年、東京生まれ)が、著者と名乗らず"語り"として自身を語った、本作りの裏側。 巷でいわれてる、若者の…

人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書)

何かに苦しんでいる自分がいるとき、この本はすこしは助けになるかもしれない。苦悩そのものを変える力はなくても、未来の苦悩を軽減したり、新しい自分に出会える、そんな糸口にはなるかもしれない。 こまかいことをいうと『黒子のバスケ』連続脅迫事件に興…

復興ストレス:失われゆく被災の言葉

東日本大震災後の福島被災者のストレスを的確に語ろうとする名著。この本を読まずして福島を語ることなかれ、と言いたくなる。著者はいわゆる文系人間から理系人間に転向して、両面から被災者の現実に肉薄した稀有な一人といえる。科学的知見だけで測れない…

魂込め(まぶいぐみ)

沖縄のことをどれほで知っているのだろう。本書タイトルを"まぶいぐみ"と読めない日本本土人である事実に向き合うことになる。戦中ならびに終戦直後の沖縄を舞台にした短編小説集。琉球の文化と歴史を知らずして沖縄のことを語る資格なんてないんじゃないか。…

男子劣化社会

ゲーム中毒、引きこもり、ニート……いまや記録的な数の男たちが、社会からはじかれている。米国心理学の権威とアシスタントが原因と解決法を論じる。政府ができること、学校ができること、両親にできること、男たちにできること、女性にできること、メディア…

本郷 (吉川弘文館刊行雑誌)2012年3月号

片づけをしていたら未開封未読の一冊を発見。そうしたら現代政治史が専門の佐道明広さんが「政治指導者の資質をめぐって」と題して、当時の民主党政権やら米国オバマ大統領について、明治維新などの指導者と比較して語っている。「危機の時代にふさわしい政…

ウイルスの意味論 生命の定義を超えた存在

ウイルスってのは細菌よりはるかに小さい物体。古くは(といっても19世紀末の発見以降の話として)小さな細菌という認識をされていたみたいだが、非生物なのだ。ていうか、生物と何がどう違うかはさておき(措いて良いかどうかは不明だが)、そもそも生物と…