新編 左川ちか詩集 幻の家
入手困難だった左川ちかさんの詩集が新編第二弾(新かなづかい)の形で発刊されたのを発見し、迷わず即買い。帯に萩原朔太郎の追悼の辞があって、価値の高まる思いさえする。
それが、こちら↓
左川ちか氏は、最近文壇に於ける
女流詩人の一人者で、
明星的地位にあったひとであった。
この人が死んだことは、
何物にもかへがたく惜しい気がする。
ーーーーー萩原朔太郎
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ちかさんは自らの早世を知覚したかのような、死を間近に据えた詩をどっしり構えて書いている。ふわふわとか、なよなよといった形容からうんと隔たった硬質な短文に収斂している。はっきり言って、なんじゃこりゃと感じる作品が居並ぶ。ストーリー性を好む者にはとっつきにくいかもしれないが、それは映画に喩えるなら、説明や台詞に頼ることを排した欧風のたたずまいとでも言おうか。
ひとつ例示しておく。
題「私の写真」
突然電話が来たので村人は驚きました。
ではどこかへ移住しなければならないのですか。
村長さんはあわてて青い上着を脱ぎました。
やはりお母さんの小遣簿はたしかだったのです。
さようなら青い村よ! 夏は川のようにまたあの人たちを
追いかけてゆきました。
だれもいないステーションへ赤いシャッポの雄鶏が下車し
ました。
♪
表紙デザインの絵がこれまたいいなあ。