別離と邂逅の詩
死友と呼ぼうか。死神の類ではなく、まるで格別親しくもない友のように、そばに死がゐる青春。どの詩にもそんな空気が漂っている。かれ(堀田善衛)の生きた時代の戦禍を明示した作品はほとんどなく、なにげない日常風景のなかに"ゐる"感じ。
「暁はまだ遠い」で始まる「風の歌」と題した一篇をすこしかかげよう。
《風よ 吹くな
ーー風は 止んだ
ーーだが 枯木は死んだ
風は また 吹く
補記。表紙の弦月も函のそれも金箔が、美しくも、さみしげに光っている。この写真がいまいちで残念。
内容紹介
「死(※)は私の生涯の歌となる」…戦後派作家が若き日(昭和12年から20年の春頃)に書いた詩44編、表題からあとがきまで、自ら編んだ、新発見の未発表詩集。資料編として詩稿II、解説を収録。
※WEB(amazon)では「詩は私の生涯の歌となる」と紹介されているが、あきらかな誤植であろ。